当事務所の弁護士が過去に扱った事例を、弁護活動の内容と結果は変えずに、事案を一部改変してご紹介します。
生活再建を目指し再度の執行猶予
Aさんは、いわゆる「ホームレス」の男性でした。ある時、空腹に耐えかねたAさんは、スーパーで食料品を万引きして起訴されました。ところが、Aさんは、以前にも同じように食料品の万引きで起訴されて有罪判決を受けており、今回の事件は、その執行猶予期間中の事件でした。
一般的に、執行猶予期間中に、再び事件を起こして刑事裁判にかけられ有罪の判決を受けると、再び執行猶予付きの判決を受けることは困難であり、執行猶予が取り消された前回の事件と新たな事件の2件の長い期間服役しなければならなくなってしまいます。
しかし、Aさんについて、万引きの原因は、前回の後、全く解決していなかった、その生活の困窮にあることは明らかであり、それを解決すれば、Aさんは罪を繰り返さなくなるはずでした。
そこで、弁護人は、Aさんに生活保護の制度を説明し、もし執行猶予付き判決となった時には、一緒に市役所の福祉課に生活保護の申請手続に行くことを約束しました。
裁判では、Aさんに事件の原因と反省を話してもらった上で、生活保護の申請に行く準備があることを裁判官に示して、再度の執行猶予尽き判決を求めました。
この主張が裁判官にも通じ、Aさんは無事、再度の執行猶予付き判決を得て、その日のうちに弁護人とともに市役所に生活保護の申請手続に行くことができました。