当事務所の弁護士が過去に扱った事例を、弁護活動の内容と結果は変えずに、事案を一部改変してご紹介します。
否認を貫き不起訴
Aさんは、ある日、街で知り合った男性に、アルバイトの話を持ちかけられました。重要な書類を、直接手で受け渡す仕事との説明を受けました。失業中だったAさんは、食いつなぐためにその仕事を引き受けることにしました。後日、男から携帯電話を渡され、スーツを用意して連絡を待つように言われました。
そしてAさんに別の男から電話がかかってきました。Aさんが書類を受け取りに行くように指示された場所は普通の住宅街でした。そこで次の指示を電話で待つようにと言われたAさんが時間を潰していると、警察官に声をかけられ、オレオレ詐欺の一味として逮捕されてしまいました。仕事だと思っていたAさんには、思ってもみなかったことでした。
勾留されたAさんは、取調べで「オレオレ詐欺だとは知らなかった。書類を受け渡すメッセンジャーの仕事だと思っていた。」と説明しましたが、取り合ってもらえませんでした。
弁護人はAさんに、取調べでは、何を言われても上記の話だけを繰り返すことと、供述調書には絶対に署名指印をしないことをアドバイスした上、連日、Aさんと接見して、取調べの状況に応じたアドバイスを続けました。
その結果、Aさんは、自分の主張を貫き、不本意な供述調書に署名指印をすることもなく釈放され不起訴処分となりました。