刑事事件の弁護被害届を出されたら


迅速な対応のため、すぐ弁護士に相談を

「他人の物を壊してしまった」、「怪我をさせてしまった」、「盗んでしまった」・・・このように他人に被害を与えてしまったのにも関わらず、誠実な対応をせず放置した場合や、謝罪や弁償が遅くなった場合には、被害者から警察に被害届を出されても仕方ありません。また、被害が大きなケースや、被害感情が強いケースでは、加害者が誠意を尽くしても被害届を出されてしまうことは避けがたい面があります。

もちろん、警察に被害届を出されたからといって、直ちに、加害者が逮捕されるとは限りません。裁判にかけられて罰を受けることが決まってしまうわけでもありません。しかし、現実に犯罪にあたる行為をして被害を与えたのであれば、被害届が提出されることで、そのトラブルを警察が知ることになり、捜査の対象とされる可能性は高くなります。具体的には、加害者が被疑者として警察に呼び出されて取調べを受けたり、自宅などの捜索差押がされたり、現場の実況見分や被害者、目撃者からの事情聴取などが行われたりします。事件によっては、加害者が逮捕され、さらに「勾留」といって、長期間、警察の留置施設などで過ごさなければならなくなることもあります。

加害者としてこのような事態を防ぐには、被害者に、誠実な謝罪と弁償を速やかに申し入れて、円満に解決するように努力することが必要です。いわゆる「示談」が成立したからといって、被害がなかったことになるわけではありませんが、示談の条件として被害届を出さないことを約束してもらったり、提出済みの被害届を取り下げてもらったりできることも少なくないからです。また、被害届の取り下げまでは応じてもらえなくても、誠実な謝罪や弁償に努めることには大きなメリットがあります。

たとえば、被害届を出されても、逮捕される前に被害者への謝罪や弁償に向けた努力をしていれば、警察としても加害者を逮捕することまではせず、いわゆる「在宅」の事件として捜査を進めることが少なくありません。

また、被害届を出されたことで、いったんは逮捕されてしまった場合でも、その後、被害者に対する謝罪や弁償の話が進んだような場合には、検察官が勾留を請求せずに逮捕の翌日に釈放されたり、あるいは裁判所が勾留を認めずに逮捕から2-3日で釈放されたりすることもあります。

さらに、すぐには謝罪や弁償ができなくても、あきらめずに誠実に努力を続けて示談が成立するなどすれば、起訴されずに済んだり、たとえ起訴されたとしても罰金や執行猶予といった比較的軽い処分で済んだりすることが期待できるのです。

このように被害者のいる事件で、謝罪や弁償をする場合は、たとえ相手が知人や顔見知りであったとしても、本人や本人の家族や知人が直接被害者と話をするのではなく、弁護士を依頼して話し合いをすすめることを強くおすすめします。いくら事件以前には関係は良好だったとしても、事件をきっかけに関係が悪化することは珍しくありません。また、事件から間もない時期には、被害者が感情的になっていることも少なくないのです。そのような状態で、本人や家族等が被害者に接触してその感情を逆なですれば、それを最後に二度と謝罪も弁償も受け入れてもらえなくなってしまうかもしれません。また、示談を焦るあまり、本人や家族等が、被害者に対して強引に示談に応じるように迫ったりすれば、今度はそのことについて「加害者側に脅された」という非難を受けることにもなりかねません。

この点、刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば、事件の内容や相手の被害の程度を踏まえ、適正な賠償額と捜査の進展について見通しを持って、円満な解決に向けた話し合いを進めることができます。そして、示談が成立した場合には、後日、問題が生じないように書面を作成した上で、必要に応じて警察や検察官、裁判官等に提出し、逮捕や勾留、刑罰などの加害者にとって不利益な処分を回避する活動をすることになります。

もちろん、示談は、相手のあることですから、弁護士といえども、必ずしも思い取りに進まないことがあるのも事実です。しかし、その場合でも、弁護士であれば、被害者の状況や事件についての捜査の進み具合を踏まえて、粘り強く被害者とお話し合いを進めて事態を少しでも良い方向へと導くことが期待できます。だからこそ、被害届を出されたような事件では、少しでも早いうちに、弁護士にご相談をいただくことが円満な解決のために重要な第一歩であるといえるのです。

以上は、被害を与えたことに間違いない場合の説明ですが、もし身に覚えのない事実や、言い分に食い違いのある事実について被害届を出された(あるいは出されそうな場合)には、安易に被害者と名乗る相手の言い分を認めて謝罪や弁償をしようとするのは危険です。その場しのぎのつもりで、相手の言い分を認めてしまうと、後で、「本当は加害者ではない」などと主張しても信用されない可能性があるからです。

このように身に覚えのない事実や、言い分に食い違いのある事実について被害届を出された場合にも、一刻も早く弁護士にご相談いただくことが重要です。それによって、警察による捜査が始まってしまう前に、弁護士がご本人の言い分を十分に聞き取って、誤った捜査が行われることのないように活動できるからです。とりわけ、警察に逮捕されずに「在宅」で捜査が進められている場合には、国選弁護人等をつけることができません。そのため、身に覚えのない事実や言い分に食い違いのある事実について被害届を出され、在宅のまま警察等から呼び出しを受けた場合には、自分から積極的に弁護を依頼しなければ、以後、ずっと弁護士が不在のまま取調べを受けることになってしまいます。もし、そのような警察の取り調べにおいて、事実と異なることを認める供述調書等にサインをしてしまえば、仮に後日、弁護人がついて、そこに書かれた内容は事実ではないと主張をしても信用してもらえない可能性があります。

このように、被害届が出された場合には、早い段階から弁護人による適切なサポートを受けられるかどうかで、その後の展開が大きく変わってくることになりますので、被害届を出された、あるいは出されそうな場合には、速やかに弁護士に相談されることをおすすめします。

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